「”志”の社会起業家に学ぶ、東北の可能性とは?TOHOKU IGUNITION DAY4開催しました」

1月18日、東北の起業家を東京に集めたイベント、「TOHOKU IGNITION DAY4」が開催されました。とうとう最終回となった今回のイベントについて、レポートをお届けします!

TOHOKU IGNITIONとは?

TOHOKU IGNITIONとは、今の東北の「面白さ」や「多様性」を伝えるために、仙台市が2016年9月〜2017年1月に全4回にわたって都内で開催しているイベントです。東北で面白い取り組みをしている起業家を東京に集め、毎回異なるテーマで開催しています。

最終回となった第4回のテーマは志とビジネス”

今、東北では新しい形のビジネスがいくつも生まれており、ハーバードビジネススクールの学生もその意味を学ぶためにたくさん来ています。(ご参考:『ハーバードはなぜ日本の東北で学ぶのか?』/http://amzn.asia/bzc84bu)

なぜ、今東北で事業をするのか?
地域の未来のために事業を立ち上げた東北の社会起業家3名をゲストにお呼びして、アツく語っていただきました。

今回の会場は、大手町にある”3×3 Lab Future”。ここは、持続可能なまちづくりや社会課題解決をテーマとした業種業態の方々が垣根を越えて交流・活動できる拠点です。

気になるゲスト、モデレーターは?

今回のゲスト、モデレーターは、一体どんな方々だったのでしょうか?
ゲスト、モデレーター含め、4名のプロフィールをご紹介します。

ゲスト
一般社団法人あすびと福島 代表理事  半谷栄寿さん

福島県南相馬市生まれ。大学卒業後、東京電力に入社し2010年まで執行役員を務める。震災後、一般社団法人あすびと福島を設立。福島に新しい価値を創る人材を育成するため、小中学生には再エネの体験学習を、高校生と大学生には「あすびと塾」と称する社会起業塾を展開。「高校生が伝えるふくしま食べる通信」という高校生の社会的事業も生まれている。東日本大震災と原子力の事故により高齢化が著しく進んでしまった南相馬を、 課題解決先進地域とすることに価値を見いだしている。


一般社団法人はまのね
代表理事  亀山貴一さん

宮城県牡鹿半島の蛤浜に生まれ育つ。震災により小さな浜は甚大な被害を受け、自身の職場も被災し、さらには妻を亡くす。それまで務めていた水産高校を辞め、牡鹿半島の浜を持続可能な集落にするために地域資源を活用したなりわい・暮らしづくりを行う。築100年の自宅を改装した”cafeはまぐり堂”を中心に、ツリーハウスやセレクトショップ、自然学校、マリン事業などさまざまな事業を行っている。

 

東北風土マラソン&フェスティバル 発起人代表  竹川隆司さん

神奈川県横須賀市出身。金融業界に務めた後に日本とアメリカで会社を立ち上げる経験を持つ。しかしアメリカの会社を設立する直前に東京で震災し、何かしなければという思いに駆られる。復興支援の取り組みをきっかけに東北に足を運び、スポーツやイベント運営の経験は無かったものの「東北風土マラソン&フェスティバル」を2014年に登米市に立ち上げる。他にも、「INTILAQ東北イノベーションセンター」を2016年に仙台市に立ち上げることにも関わるなど、地域を元気にするためのプロジェクトを進めてきた。地域の魅力、東北の魅力、チカラを、世界に向けて発信することが目標。

 

 

モデレーター
一般社団法人RCF 代表理事 藤沢烈さん

京都府生まれ。大学卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て独立し、NPO・社会事業等に特化したコンサルティング会社を経営。東日本大震災後、RCF復興支援チーム(現・一般社団法人RCF)を設立し、復興/社会事業コーディネーター として、セクターや地域を越えて、社会課題起点の価値創造を目指す。その傍ら、復興庁政策調査官、文部科学省教育復興支援員を歴任し、現在は総務省「地域力創造アドバイザー」も兼務している。

 

 

 

第1部 パネルディスカッション

第1部はゲストによるパネルディスカッション。
まず開会に先立ち、本イベント主催者の仙台市経済局地域産業支援課長の杉田より趣旨を説明しました。


(仙台市経済局地域産業支援課長の杉田からご挨拶)

続いてモデレーターである藤沢さんにマイクをお渡しして、パネルディスカッションスタートです。

自己紹介

藤沢さん「まずは、私の自己紹介を。一般社団法人RCFは、地域の方や企業、行政、NPO、事業者の方々をコーディネートしながら東北の課題解決に取り組んでいます。地域の中で商品を作り上げ、地域に付加価値を残していく取り組みなど、様々な事業をコーディネートしています。

ではさっそく、ゲストのみなさんから、”どんな事業を行っているのか?”、”どんな想いで日々事業に向き合っているのか?”についてそれぞれお聞きします。ではトップバッターの半谷さん、よろしくお願い致します。」


(モデレーターの一般社団法人RCF 代表理事 藤沢さん)

半谷さん「私は、震災が起こる前年まで東京電力の役員だった人間です。そのため、東日本大震災での原子力の事故に関して、大きな責任があります。加えて私は、原発から25キロ離れた南相馬市の生まれ育ちです。ですから、「どうしても復興に役立たなくちゃいけない、役立ちたい」という想いで、一般社団法人あすびと福島を立ち上げました。

あすびと福島は、明日の福島を担う人材育成をする社団法人で、大きく分けて3つの事業を行っています。一つ目は、人材育成事業。高校生や大学生を対象に月1回の社会起業塾を行っています。実際に、”高校生が伝えるふくしま食べる通信”という食材付き情報誌を発行し、福島の農業への信頼回復に取り組んでいます。二つ目は、体験学習。”南相馬ソーラー・アグリパーク”という太陽光発電と植物工場を拠点に地元の小中学生の体験学習を行っています。そして、三つ目は、企業研修です。積極的に企業研修を受け入れ、被災地の課題を自分事化していただいています。そこで頂戴した対価を福島の小中高生、大学生の人材育成費用に当てさせていただいております。これらの事業を通して、社会起業塾出身の彼らには私たちと一緒になって、地方創生のリーダーを目指してもらいたいと思っています。」


(一般社団法人あすびと福島 代表理事 半谷さん)

亀山さん「一般社団法人はまのね 代表理事の亀山です。私は、地元である石巻市牡鹿半島の蛤浜で築100年の自宅を改装した古民家カフェ”はまぐり堂”を中心に、ツリーハウスや地域のものを売ったセレクトショップ、自然学校、マリン事業等を行っています。他にも、害獣対策や放置林・土砂災害対策として商品開発をし、地域の課題を解決できるように様々な事業に取り組んでいます。

私がこの事業を始めた理由は、自分の生まれ育ったふるさとを人が集まる持続可能な集落にしたいと思ったからです。この集落は、元々9世帯の限界集落だったのですが、震災による被害で、集落の人口は5人にまで減ってしまいました。私の家は残ったものの、女房を津波で亡くし、勤務していた水産高校も被災。大好きだった蛤浜の景色も変わってしまいました。

なんとか生活が一段落した頃、このプロジェクトを立ち上げました。最初は一人でしたが、想いを伝え続けて仲間を増やしました。そして震災から2年後の2013年3月11日。水産高校を辞め、カフェをオープンさせました。最初は「こんなところに人が来るわけがない」と言われてきましたが、今では年間約15,000人、4年間で約5万人もの方々にお越しいただいています。このように、まずは交流人口を増やして、持続可能な集落として次世代に引き継いでいきたいと思っています。」


(一般社団法人はまのね 代表理事 亀山さん)

竹川さん「私は神奈川県横須賀市の出身です。これまで日本とアメリカで会社を立ち上げるという経験をしており、東北やイベント運営、スポーツには全く関係のない生活をしていました。東北につながりのない私がこのイベント開催を決めたきっかけは、東日本大震災の被災地に何かしたい、という強い気持ちからでした。そこで思いついたのが、”メドックマラソン”だったのです。

そもそもメドックマラソンとは、フランスのワイナリーのきれいな景色と地元の食や飲み物を楽しむことができる大会です。そこではなんと、給水の代わりに”給ワイン”が出てきます。ワインを飲み、牡蠣やサンドイッチなどを食べながら走る事ができるのです。それだけではありません。このメドックマラソンは、外から数万人の集客をするので、地域に20~30億円の経済波及効果をもたらし、その結果、地元のワインはグローバルブランドにまで成長しました。

私はこのメドックマラソンの日本版を東北で開催しています。東北のきれいな景色の中を走りながら、地元のおいしいサンマやソーセージを食べ、ゴール後は日本酒を飲む。ここに来れば風景も食も日本酒も、東北の魅力を存分に楽しんで頂ける大会となっています。おかげさまで昨年は4万人の方に来ていただきました。そのうち半分は宮城県外から来ていただいたので、地元には2億円以上のお金が落ちています。それだけでなく、このイベントを継続することによって東北の食、日本酒を世界に発信したいと思っています。」


(東北風土マラソン&フェスティバル 発起人代表 竹川さん)

パネルディスカッションテーマ①「これまでにぶつかった壁は?」

藤沢さん「ありがとうございました。それではさっそく質問です。みなさんは志が出発点となり事業をはじめていらっしゃいますが、これまでどういう壁に突き当たり、どう乗り越えてきたのでしょうか?」

亀山さん「振り返るとたくさんありましたが、一番は事業の継続や発展と、浜の静かな暮らしを守ることの両立ですね。震災後、人口5人の集落になってしまったので、地元の方からにぎわいがほしいという声を聞きました。しかし、カフェを始めてみると、想像以上にたくさんの方に来ていただいています。ここは観光地でも商業施設でもない小さな集落なので、「こうなるとは思わなかった」と、地元の方にご迷惑をおかけすることも多々あります。そのため、お客さんが来すぎないようにメディアの取材をお断りをしていますが、事業を継続させていくためには集客も必要なので、この両立に頭を悩ませています。」

竹川さん「私たちは2014年4月に、第1回の東北風土マラソン&フェスティバルを開催させていただいたのですが、その第1回の開催までは、困難も多くありました。何せ、4月に第1回大会の開催を目指していたものの、その3ヶ月前の1月にまだ第1回目の連絡会議を地元で行っているというギリギリの状態だったのです。

私はビジネスの経験があったので、その感覚でマラソン大会を開催しようと考えていました。大きなスポンサーを獲得して運営経費は確保しました。ウェブサイトやチラシのデザインも素敵なものができました。準備は完璧だからぜひここで大会をやらせてください、というお願いの仕方をしたのです。

ただ、地元は全然温まっていませんでした。理論的には「正しい」方法でも、地元の方々が求めるものでなければ何の意味もありません。それから私は覚悟を決めてアメリカからも戻り、何名かの有志と共に、連絡会議のメンバーやコース周辺にお住まいの方々に直接お話をするために、100軒以上のお宅を何回も必死に回りました。そうして地域の皆様からの理解も深まり、最終的に大会の告知ができたのは、開催の約1.5ヶ月前の2月28日。本当にギリギリのタイミングだったので、それが一番の困難だったかなと思います。」

パネルディスカッションテーマ②「事業としてのゴールは?」

藤沢さん「次の質問として、未来の話を伺いたいと思います。皆さんが目指しているゴールを教えてください。」

半谷さん「私が目指しているのは、憧れの連鎖をつくることです。高校生や大学生の社会起業塾を継続させていくことにより、小さいながら福島で事業を興そうという人材が必ず生まれると思っています。そのためには、「地方で新事業を興すことは素敵なことなんだ」と将来の選択肢を示すようなトップランナーを育てることが重要です。私たち社団スタッフがトップランナーになるかもしれませんし、今の大学生がトップランナーになるかもしれません。時間はかかりますが、企業研修等で資金を確保しながら、時間を十分にかけて行っていきたいと思っています。」

亀山さん「私は、自然と共存してきたおじいさんおばさん世代と、現在の経済性を両立させたものを作っていきたいと考えています。例えば、最近はオーガニック食品が流行っていますが、昔で考えるとそんなの当たり前ですよね。おばあちゃんがこやしを畑にまいたり、おじいちゃんが海から獲ってきたエビをおやつに食べたり。それが効率を重視する社会の中でどんどん廃れていって、今の時代ではすごく高い商品になっています。地方が消滅すると、この流れはますます加速してしまいます。地方を維持し、昔の当たり前の良さを今の経済の中に落とし込んだものを生み出していきたいです。

また、地方では、もっと場所や資源を生かした、多様性のある働き方ができるのではないかと思っています。東北には素材はたくさん転がっています。この楽しみ方を見つけて、どんどん新しい事にチャレンジできる場にしていきたいです。そうすれば、石巻や東北に自然と人がたくさん集まってくると思います。」

竹川さん「私たちのミッションは、”マラソンで世界と東北をつなげること”です。現在の外国人比率は3%くらいですが、いずれは外国人参加者の数を今の10倍にすることがゴールだと考えています。

実は、最初から英語のサイトだけは作っていました。1回目の大会は2ヶ月しか告知期間がなかったため外国人参加者は2人だけでしたが、2回目の大会では60人、この前の大会では102人と、どんどん参加者を増やすことができています。仙台には”仙台国際ハーフマラソン”という大会もあるのですが、実はそちらの外国人参加者は27人です。私たちの大会は、東北の中では外国の方を呼べる大会になりつつありますし、そこをとがらせていくしかないと思っています。

海外の方に参加していただくために、私たちはマーケティングコストを1円も使っていないんです。ただ、影響のあるブロガーやウェブメディアの方に想いを伝えるメールをして、ぜひ来てもらおうとアタックしています。その方が2、3人連れてきてくれたら、参加者も300人になりますし、その連れてこられた方々が満足してまた2、3人連れて来てくれたら、参加者も900人になります。そういう口コミで参加者の輪を広げていけたらと考えています。」

パネルディスカッションテーマ③「東北の可能性は?」

藤沢さん「みなさん、東北で事業を興していらっしゃいますが、東北の可能性について最後に伺いたいと思います。」

半谷さん「東北は、20年課題を先取りした地域です。今こそ志のある企業や、個人が東北と向き合う時です。東北でどんなに小さくても社会的事業の素を生み出す事ができたら、それは20年後の日本社会で大きく役立つソーシャルモデルになると思います。さらに言えば、中国や韓国といったアジアで役立つモデルになるかもしれません。このように、20年先の課題を解決するやりがいを感じられることが、東北の可能性だと思います。」

竹川さん「私は東北の可能性は、魅力を世界に発信していく伸びしろがあるところだと思います。私は震災後、ニューヨークと東北を往復する生活をしていましたが、こんなにきれいなものやおいしいものがたくさんあるのに、外に発信されていないのはもったいない。自分には東北のものを世界につなげていくことができるのではないか、と思っていました。

そのために、イベントを通して生産者の方々に頑張ろうと思えるきっかけを作っていきたいです。生産者の方には、目の前でたくさんのお客さんが「おいしいおいしい」と言って飲んだり食べたりしているところを見てもらいたいですし、「もっと売れるんだ」、「もっと用意したいな」と、イベントを通してモチベーションがあがるようなきっかけを作りたいです。

そして肌感覚ではありますが、実際に生産者の方に変化があったように感じます。イベント開催後、「来年は新しい甘酒を売っていこうかな」とか、「この前海外セミナー行ってみたよ」という声を聞きました。そういう方を一人でも多く増やし、サポートしていきたいです。また、日本への外国人観光客は増えていますが、東北はまだまだ伸びしろがあります。そういったところにも東北の可能性を感じますね。」

会場からの質問

藤沢さん「みなさん、ありがとうございました。それでは会場の皆さんからも質問を受け付けたいと思います。質問がある方はいらっしゃいますか?」

参加者「竹川さんに質問です。外の立場から東北に関わっている竹川さんにとって、”地域活性”という言葉の定義はどのようなものですか?」

竹川さん「非常に難しい質問ですね。おそらく難しいと感じるのは、”地域によって違うから”なんだと思います。私が日本の地方にいて一番感じる事は、”人口減少”や”高齢化”は、危機とか課題とかではなく、”現実”です。つまり、そのピンチはチャンスに変えていかなければなりません。定住人口を増やそうという解決策も良いとは思いますが、日本は外国人を定住させないと言っている以上、日本の中で定住人口を獲得しようと争っても意味がないと思っています。

それをふまえると、私にとっての地域活性化の定義は、”どれだけ外貨を稼ぐ力があるか”ということ。よその地域から人を呼んで交流人口を増やしたり、自分たちのものを外に売り出したりして、どれだけ外貨を稼げるかが1つの指標になると思います。」
藤沢さん「これをもちましてパネルディスカッションは終了とさせていただきます。ありがとうございました。」

第1部のパネルディスカッションは、ゲスト3名から一言ずつアドバイスをいただき、大きな拍手で締めくくられました。

第2部 懇親会

「かんぱーい!」

半谷さんの乾杯の音頭とともに、第2部の懇親会がスタートしました。
ここからは、ゲストも参加者もスタッフも一緒になって交流します。

毎回恒例ですが、今回の懇親会でも、東北のおいしいお酒と食べ物が用意されました。


(東北が誇る日本酒の数々)

料理は東北6県のものがすべて揃いました。

左から順に、
・十和田バラ焼き(青森)
・笹かまサラダ(宮城)
・豆腐田楽(岩手)
・ぽーぽー焼き(福島)

・きりたんぽ鍋(秋田)
・山形だし(山形)

今回も、会場では名刺交換する様子が見られ、みなさん交流をお楽しみいただけたようです。

楽しい時間はあっという間とよく言いますが、まさにこのことですね。盛り上がりの中、一本締めで終了しました。

終わりに

いかがでしたか?

東京に東北の起業家や東北に関心のある方々が集結するこのイベント。最終回の今回は、「東北のビジネスと志」というテーマでアツいトークが繰り広げられました。

イベント後のアンケートも好評で、多くの反響をいただいております。次年度以降も継続させていきたいと思いますので、ぜひ今後ともよろしくお願いいたします。