SENDAI for Startups!2020 DAY3

SENDAI SOCIAL INNOVATION SUMMIT 2020

社会起業家たちがビジネスで課題解決策を提案

「SENDAI for Startups!」最終日となる2月26日は、東北の社会起業家たちがビジネスプランをピッチする「SENDAI SOCIAL INNOVATION SUMMIT 2020」が開催された。主催は仙台市と、一般社団法人IMPACT Foundation Japan (INTILAQ)。

開会に先立ち、仙台市経済局酒井宏二さんがあいさつ。「震災後、地域のため、社会のためを思う起業家が生まれてきた。社会課題をビジネスによって持続的に解決しようとしている起業家たちの思いや取り組みに耳を傾けていただければ」と話した。

早大教授・入山章栄さんによるオープニングセッション

 

開幕は、早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄さんによるオープニングセッション。入山さんは「昨年東北の起業家の皆さんのピッチを聞いて、こんなに熱い思いを持っている起業家が東北にいるんだと心を打たれた」と語り、ピッチの審査員を務める内閣府科学技術・イノベーション担当企画官の石井芳明さん、NPO法人クロスフィールズ代表理事の小沼大地さん、BUSINESS INSIDER JAPAN統括編集長の浜田敬子さんを紹介した。石井さんは「ソーシャルインパクトのある企業をたくさん生み出さなければいけないと思っている。仙台はソーシャルスタートアップの層が分厚い。今日は東北であればぜひ、ということで来ました」と期待を口にした。

社会変革の萌芽①トークセッション

 

続いて「社会変革の萌芽」と題したトークセッションでは、武田薬品工業・亀田俊樹さん、ゆらリズム・野崎健介さん、NTTドコモ東北復興新生支援室・水野浩伸さん、RAPiC高橋そのみさんが登壇。モデレーターをINTILAQ竹川隆司さんが務め、仙台での大企業と社会起業家との協働についてトークした。

 

仙台で介護デイサービスなどを展開する「ゆらリズム」では昨年、武田薬品工業の社員の3カ月のグローバルリーダー研修を受け入れた。野崎さんは「現場を見てしっかりしたコンサルをしてもらい、バランスがよくてとてもよかった。人との出会いを通じて、本気でビジネスを提案を考えていただいた」と話した。亀田さんは「介護や福祉はあまり知らない分野で、一人の起業家がその分野にコミットしたときのハードルの高さがわかった」と実感を語った。

NTTドコモの水野さんは社会起業家支援として仙台市で「Social ✕ Techコンテスト」を開催。女性の働き方の課題をICTで解決しようとするRAPiCの高橋さんのプランが大賞を受賞し、今後協働して事業を進めていくことになった。水野さんは「社会課題と通信を絡めたらどうなるのかと考えた。コンテストでは女性、障害者、福祉といった普段あまり耳に入らない社会課題を聞ける貴重な機会になった」、高橋さんは「私達が助けてもらうだけでなく、ドコモの女性の勤務実態や育児休暇の状況などの取り組みも今後聞いていけたら」と語った。

社会起業家と大企業が協働するインパクトについて、野崎さんは「一人ひとりの起業家が気付きを得られるきっかけになり、学びになった」、亀田さんは「肩書が全くない状態でどれだけできるか、リアルな場所と課題がある中で挑戦できるのはとてもダイナミックなこと。企業と課題のブリッジができる環境がもっと作れたら」と期待を込めた。

「SOCIAL INNOVATION Accelerator 2019」採択者ピッチ

 

そしていよいよ、社会起業家を育てる半年間のプログラム「SOCIAL INNOVATION Accelerator(SIA)」の採択者12人によるピッチが開かれた。

 

障害を持つ人が自ら自助具を開発できる「Kosaeru Tohoku」

一般社団法人ファブリハ・ネットワーク 伊藤彰さん

 

作業療法士として在宅のリハビリ支援をしている伊藤さんは、障害を抱えている人

が自分を持っている力を発揮できていない社会を変えたいと「Kosaeru Tohoku」プロジェクトを発表。障害を持つ当事者や支援者が3Dプリンターなどを使って自分の欲しい自助具を作るワークショップを開き、完成したデータをオープンソースとして全世界に公開するというものだ。伊藤さんは「ものづくりを通じて達成感や連帯感が生まれ、最終的に参加された人たちのコミュニティーが生まれることを目指す。障害を抱えている人を『ピアクリエイター』として30人、東北から創出することが目標です」と話した。

高校生が自分らしく生きられる場所「AKIU SCHOLE」

社会起業家 伊藤真結さん

8年間数学教諭として高校教師をしていた伊藤真結さん。自死を選ぶ10代の理由の30%が「学校」を理由としていることを課題として挙げ、「みんなが自分らしい色で輝ける世界にしたい」と、仙台市の秋保に「AKIU SCHOLE」を作る計画を発表した。使われなかった古民家を改装して2020年4月にオープン予定で、高校生が土日を使ってその場所を拠点に自分の好きなことに打ち込み、さまざまな挑戦ができるように計画している。伊藤さんは「モデルを確立したら東北各地へ、日本各地へ拡大していきたい。子どもたちが思いっきり生きられる環境をみんなで作っていけたら」と語った。

 

農家Gatewayコミュニティスペース「りんごのはな」

りんごのはな 越後千寿さん

青森県三戸市で公務員として勤務していた際に鬱状態を経験した越後さん。実家の畑や自然に癒やされて回復した経験から、同じように疲弊している人を癒やせるような農家Gatewayコミュニティスペース「りんごのはな」の開設を準備している。空き家をリノベーションし、宿泊機能、地元の人も使えるシェアキッチン、コミュニティスペースを設け、畑を中心としたサードプレイスを作る計画で、農家の人々に農業にもっと誇りを持ってもらう機会にもつなげたいという。越後さんは「一度きりの農業体験ではなく、自分自身の生命を感じる時間を提供したい。あの人の生き方かっこいいな、とこの場所からロックな人の輪が広がっていくことが目標」と語った。

 

「生きるチカラを育む次世代型教育を」

株式会社dremLab 小川智美さん

2014年に子どもたちの自己肯定感を高めたいと「dreamLab」を設立した小川さん。みんなが同じ授業を同じペースで一斉に受ける現在の教育システムが子どもたちを苦しめているとして、小中学生を対象にした新たな教育モデルを提案。オランダの「イエナプラン教育」を導入し、カリキュラムの個別化や子どもたちが教え合えるような学習方式、専門性の高い外部講師と連携した探究型のプログラムなどを提供する予定という。小川さんは「学校に行かなくても学べる環境を作り、世の中から不登校という言葉をなくしたい。子どもたちの可能性を大人が潰すのではなく生かすことで、子どもたちが輝ける社会に」と語った。

 

保育士が一生働きたいと思える職場を実現するためのITシステム「O2」

FourS株式会社 佐々木拓哉さん

母の運営する保育園の経営に携わっている佐々木さんは、保育士には勤務時間内に手がつけられない事務作業が多く、サービス残業や長時間労働が常態化し離職してしまうという保育現場の課題を語る。そこで、こうした作業をアプリで代替して業務量を削減するとともに、

目標達成の進捗管理や達成度評価、評価に基づいた昇給システムを保育園側が整備できるようなITシステム「O2」を発表。10年後に東北各地の150園での導入を目指すという。佐々木さんは「保育業界の課題を解決し、関わるすべての人が未来を描ける社会を実現したい」と話した。

 

美しい西和賀町の「まちやど」で「五感取り戻す体験を」

ネビラキ 瀬川然さん

子供の頃から、岩手県西和賀町の美しい景色の中で暮らすことの豊かさを感じてきたという瀬川さん。今の日本では自分で暮らしをつくる感覚が薄れ、生きるリアルを失っているのが課題ではないかと投げかける。そこで、自分の手足を動かし、心の底から喜んだり落ち込んだりするような感受性の動きや身体性のある体験を西和賀町で提供する事業を企画している。構想中の「まちやど」では西和賀町の一帯をひとつの宿と見立て、ゲストハウス、自然を生かしたアクティビティ、カフェを3本の事業の柱として展開する予定だ。瀬川さんは「西和賀町で圧倒的リアルを感じ、みなさんの五感を取り戻しましょう。西和賀町でお待ちしています」と呼びかけた。

ICTスキルとコミュニティで「女性の人生を自由に」

株式会社RAPiC 高橋そのみさん

高橋さんは、日本ではいまだ女性の平均月額給与が男性の半額にとどまっているなどの課題を挙げ、一方でICT人材は不足している現状を指摘する。女性がICTスキルとコミュニティを通じて自由に人生を決められる社会の実現を掲げ、女性の心技体を支えるコミュニティ「Sonomity」を立ち上げることを発表。ICTのセミナーや勉強会を開催するほか、カウンセリングやメンタリングを通じてロールモデルとなる女性を育成し、活躍する女性が次々生まれる循環を作る。高橋さんは「女性にICTスキルとコミュニティを与え、時間や場所にとらわれず自由に働ける社会を目指す。私が最初の一歩を踏み出すので、ついてきて下さい」と語った。

 

「オトナダチ」プロジェクトで、不登校という言葉のない社会へ

フリースクールこどもの居場所ピッピ 中田更沙さん

小学生の長男と次男が不登校になった経験を持つ中田さん。自ら立ち上げたフリースクールで新たに始めようとしているのが「オトナダチプロジェクト」だ。フリースクールで親以外の大人に認められると子どもたちが生き生きと変化していくのを目の当たりにした経験から、多様な大人と子供たちを結びつけ、子供たちのやりたいことを技術を持つ大人が教えてくれるような「ちょっと年上のダチ」の関係性を築いていくことを目指す。オトナダチは誰でも登録可能で、中田さんは「オトナダチを一年間で千人に増やし、宮城県内で年間7人という自殺する子供をなくしたい。ぜひオトナダチに登録してほしい」と会場に呼びかけた。

 

障害者の外出を応援するSNS「ぼうけんのおとも」

ぼうけんのおとも 成澤裕章さん

重度身体障害を持つ成澤さんは、障害者に対していまだ偏見や差別的な発言があることが障害者の外出を阻んでいると指摘する。そこで、障害者の外出という「小さな冒険」を応援できるようなSNSサービスを提案。障害者が行きたい場所があるとき、予定が空いているサポーターとマッチングし、同行してもらうことができる。この外出に対し、他のユーザーは「いい旅だね!」と応援することができ、障害者が勇者となって冒険と成長ができるようなゲーム性も持たせたいという。成澤さんは「障害者が勇気を出した先に温もりのある道を作れると信じている。一緒に冒険し、社会を変えていきましょう」と投げかけた。

 

女性のためのインキュベーション施設で教育の機会を

株式会社グリーディー 浜出理加さん

女性のためのライフデザインカンパニー「グリーディー」を経営し、2年前から女性のためのイベント「ハッピーウーマンフェスタ宮城」を主催する浜出さんは、2020年12月に新たに女性のためのインキュベーション施設を仙台市に開設する構想を発表。コワーキングスペースやイベント開催のほか、行政や教育機関などさまざまな機関と連携することで、あらゆるライフステージの女性のキャリア支援や起業支援を展開していくという。浜出さんは「女性たちが1mmずつ変化を続けたらイノベーションが起きるはず」と信念を語った。

 

消費者の「エシカル消費」を促進する気候行動SNS「ONE」

株式会社環境社 藤木健さん

リサイクル業の会社を営む藤木さんは、地球温暖化対策の誰でもできる持続的な取り組みとして「エシカル消費」を提唱。「環境、人、社会に配慮した商品を消費者自身が選べば社会は変わる」として、エシカル消費や環境問題に特化した情報を集約した気候行動SNS「ONE」を発表した。例えば廃棄着物を再生利用しているアパレルブランドで買い物をしたときにユーザーがその出来事を投稿すると、ユーザー同士で称賛したり、フィードバックをもらったりすることができる。今後「エシカルYouTuber」にもチャレンジしたいという藤木さんは「持続可能な社会の一助になれば」と思いを語った。

 

岩手で挑戦する若者を増やす「いわてカルティべスクール」

株式会社カルティべ 大和一陽さん

大和さんは岩手の若者の地元就職率がとても低い現状を挙げ、岩手の若者の間に起業家精神が醸成されるようなしくみとして「いわてカルティべスクール」を2020年4月から開講する計画を発表した。1年間にわたるスクールのプログラムでは、若者が岩手の起業家とともに地域課題に取り組んだり、起業家のもとでのインターンシップを経験したりしながら、最終的に自ら事業を行うことを目指す。大和さんは「若者や行政、地元企業を巻き込んで岩手全体でチャレンジする環境をつくりたい」と意気込み、「講師として協力してくれる方や塾生のインターンを受け入れてくれる方を募集している」と呼びかけた。

 

社会変革の萌芽②パネルディスカッション

 

社会起業家たちのピッチ後は、審査員である早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄さん、内閣府科学技術・イノベーション担当企画官の石井芳明さん、NPO法人クロスフィールズ代表理事・小沼大地さん、BUSINESS INSIDER JAPAN統括編集長・浜田敬子さんによるパネルディスカッションが開かれた。

入山さんがピッチの感想を問いかけると、石井さんは「聞いていて頷き続けてしまうピッチだった。東京のビジネスコンテストと決定的に違うのは、ビジネスモデルの話がほとんどなかったこと。そこは会場の皆さんが記入カードで補完していくしくみなのかも、とも思った」とコメントした。

 

小沼さんは「思いの伝わるプレゼンに心を揺さぶられた。優劣を決めるとすれば、『社会にとってよさそうなもの』というよりそれが『本当に社会を変えるものなのかどうか』というところだと思う。こういう社会を作りたいんだ、というビジョンがあり、道筋があり、具体的なアクションがあるかどうかが大事」と指摘した。

 

浜田さんは「ニュースとは社会の課題を取材するもので、現在のテーマとしては地方、子供、女性、障害者などが多い。今日のプレゼンではそんな日本が抱えている課題がまさに凝縮されていて、それを解決しようという志だけでも素晴らしいと思った」と称賛した。

社会起業家へのメッセージを求められると、石井さんは「仙台はソーシャルイノベーションの首都になれると思う。ここを起点に社会起業を伸ばしてもらえれば」。小沼さんは「プレゼンした人がみんな幸せそうだったのが嬉しく思った。社会起業家は怒りをエネルギーにしてしまうと続かないし、楽しくないと真似されない。みなさんが楽しくいることが大事なので、一緒に頑張りましょう」。浜出さんは「自分が住んでいるところに住み続けたい、就きたい仕事に就きたい、というのは原点。素晴らしいことだと思うのでぜひ頑張って下さい」とエールを送った。入山さんは「これをきっかけに生まれたつながりを続けられたら」と、起業家たちに呼びかけた。

共感賞、優秀賞、大賞が贈られたのは

 

会場投票が最も多かった「共感賞」は、「AKIU SCHOLE」を発表した伊藤真結さんと「オトナダチプロジェクト」を発表した中田更沙さんの2人に贈られた。

審査員が選ぶ「優秀賞」は、「Kosaeru Tohoku」を発表した伊藤彰さん、「Sonomity」を発表した高橋そのみさん、「ぼうけんのおとも」を発表した成澤裕章さんの3人に贈られた。

そして大賞は、中田更沙さんに贈られた。賞が贈られた瞬間、会場に駆けつけていた中田さんの家族が登壇して花をプレゼントし、一緒に受賞を喜んだ。

入山さんは「点数や順番ではなく、全員大賞にしたいほど素晴らしかった。ぜひこれからも仙台、東北を盛り上げていただければ」と話し、イベントを締めくくった。