SENDAI for Startups! 2019 DAY3

東北から世界をねらう急成長スタートアップ、集結。

TOHOKU GROWTH ACCELERATOR DEMO DAY

地方最大規模を誇る起業イベント「SENDAI for Startups!」最終日の24日は、事業の急成長を狙うスタートアップ企業が集まる「TOHOKU GROWTH ACCELERATOR DEMO DAY」。投資家や事業会社を前に5人の起業家がピッチしたほか、メインステージ・特設ステージの2カ所でスタートアップをさまざまな観点から考える6つのプログラムを展開。450人の参加者で会場は満席に、特設ステージには立ち見も出るほどの人が押し寄せ、仙台の起業への熱の高まりが体現された一日となった。

 

「前へ進んで行く」エレクトロバンドの世界観が会場を圧倒

開幕は、エレクトロバンド「UQiYO」のオープニングアクト。「(起業すると)色々なことが起きる中で、それでも前へと進んでいく」(yuqiさん)ことをイメージしたという映像とともに繰り広げられるサウンドの壮大な世界観に会場は圧倒され、大きな拍手が沸き起こった。

「収益」「機能」の時代から、「社会性」「意味」の時代へ

〜平成最後のスタートアップ談義〜

オープニングセッションは、「平成最後のスタートアップ談義~これからのスタートアップはどう変わるのか?~」と題し、The Breakthrough Company GO代表の三浦崇宏さん、日本ベンキャーキャピタル協会会長の仮屋薗聡一さん、WAmazing代表の加藤史子さん、MAKOTO代表の竹井智宏さんが登壇。司会をYahoo!アカデミア学長の伊藤羊一さんが務めた。

議論は伊藤さんの「平成はどんな時代だったか?」という問いかけからスタート。仮屋薗さんは「1989年の時価総額ランキングにはトップ10に7社も日本の企業が入っていた。ジャパンアズナンバーワンが平成の始まりだったが、情報産業が席巻しもう一度中心がアメリカ西海岸に戻った30年だった」。三浦さんは「昭和は『国家』の時代だったのが、平成は国家から『企業』と『機能』の時代になったと思っている。国家への信頼がどんどん失われて企業に信頼が置かれていった時代。企業が機能を競い合ってコモディティ化していった」と表現した。

 

議論が東北でのスタートアップの可能性の話題に移ると、竹井さんが「東北の課題を見つけ解決するビジネスは規模が小さいと思われがちだが、実は東北だけでなく『地方』全体の課題解決につながるのでマーケットが大きい」と指摘。加藤さんは「物が移動する第二次産業は地域が空洞化するが、第三次産業である観光は空洞化せず、人が移動してくるもの。東北はインバウンドで人気の北海道より、世界遺産も温泉もスキー場も数が多く、めちゃくちゃ可能性がある」と、自身の事業の可能性を交えて話した。

 

そしてこれからの潮流について、仮屋薗さんは「世界は今、社会的価値を生み出す投資先を求めている。収益と社会性をどう両立するかが次の世界の潮流になる。社会貢献しながら収益を生むビジネスへの期待が高まっていく」と予想。三浦さんも「企業と機能の時代から、『個人』と『意味』の時代へ変わっていくと思う。どういう意味があってその企業が社会に存在するのか?特定の誰かや価値観を求めるようなサービス・プロダクトをいかに作れるか?が重要」と応じた。竹井さんは「社会貢献は東北の得意分野。東日本大震災後はさまざまな起業家立ち上がり、社会貢献意欲に欠けた人はいない。その意味でアドバンテージのある場所にいると思うので、それをチャンスにつなげて世界に打って出ていかないといけない」と議論を締めくくった。

 

起業家5人のスタートアップ・ピッチ

続いて、仙台市とMAKOTOが展開する事業の急成長をねらう起業家育成プログラム「TOHOKU GROWTH Accelerator」の採択者5人によるピッチコンテストがスタート。一人7分の持ち時間で、ビジネスプランや成長スキームを披露した。

 

「Vtuber」でアイドル市場の席巻ねらう

トップバッターは、YouTubeで活躍するバーチャルキャラクター「Vtuber」の運営をするZIG代表の小泉拓学さん。Vtuberを日本で70年近く続くアイドル市場の中に位置付けた上で、Vtuberは認知度が拡大する一方、アクティブ率が47.5%と低いという課題を指摘した。その理由を「運営側には決定的なマネタイズ方法がなく、ファン側には自分の欲望を満たすサービスがない」ことだとして、双方の課題を解決するための自社サービス「MeChu」を発表。ファンがVtuberと二人きりで喋れるサービスで、ファンが好きなVtuberを支援する月額課金制にすることで安定的なマネタイズを目指す。既に50体のVtuberをデビューさせ、185万人の登録者数がいることを自社の強みとして挙げた。

ピッチ後のコメントでは、gc ストーリー代表の西坂勇人さんから「グローバルニッチを攻めていることが一番の強みになる。先の見えない時代だからこそ自分の信念を貫いてほしい」との意見が出た。

 

胎児の状態を在宅で確認できる心電計アプリを開発

東北大学発ベンチャー・クラウドセンス代表の冨田尚さんは、出産時の異常分娩の割合が約3割に上る日本の課題を指摘。その理由について、妊婦が陣痛をうまく把握できないことや、胎児心拍計の精度が悪く、胎児の状態に少しでも不安があると必要がなくても帝王切開してしまう事例が多いことを挙げた。そんな課題を解決するサービスとして、東北大学教授が開発した高精度の胎児心電計を用いた「在宅胎児心電モニター」を発表。家にいながらスマホのアプリで母体の状態や胎児の心電図を確認でき、陣痛や胎児の状態を客観的な数値で把握することで、病院に行くべきかどうかを知ることができたり、ボタンを押すと医師に相談できたりするというものだ。「より安全で安心な出産をすべての妊婦さんに提供したい」とプレゼンを締めくくった。

Full Commit Partners代表の山田優大さんは「ユーザーとなる妊婦さんが使っていることをSNSなどでシェアしたくなるような仕組みや、デザインの作り込みが必要だと思う」とコメントした。

 

障害児が安心してサッカーできる環境づくりで、全国展開

サッカースクールを20年運営してきたゼンシン代表の前田忠嗣さんは「サッカー療育で障害児の未来を切り開く」と題して発表。以前サッカースクールで発達障害の児童が辞めてしまった経験から、障害児が安心してサッカーができる環境を作ることで、障害児の自己肯定感を高めていく療育を展開すると話した。国の認可を受けた「放課後等デイサービス」の枠組みを用いて全国に200事業所を展開し、「サッカー療育の一点突破で全国展開して上場する」との目標を宣言。視覚障害者の姉がいることを明かした上で、「将来的には障害者に対する就労支援や介護支援、勉強支援などあらゆるサービスを展開したい。障害者もその家族も不安を感じない、障害者と健常者が共生できる社会をつくりたい」と語った。

プロトスター代表の栗島祐介さんは「子供たちの過ごす場所と遊ぶ場所をつくる意味ある取り組み。(障害者の)就労移行支援も地方では広がっていないので、ぜひ全国で展開してほしい」と評価した。

 

エンタメ分野のソフトウェア資産を再利用できるプラットフォーム

フリーバル代表の小野潤一郎さんは、スマートフォンが進化してソフトウェアがCGやVRなどリッチ化したことで、スマホゲームの制作費が数年で10倍に高騰している現状を説明。各メーカーのソフトウェア資産を再利用できるプラットフォームを作ることで、エンタメ業界のソフトウェア制作費を削減するサービスを提案した。プラットフォームは、メーカーが持つ既存のゲームのソースコードやビジュアル・音源などの素材をアップロードし、新たに開発したいチームが欲しい資産を選んで支払う仕組み。支払いの手数料を収益とし、市場規模をグローバルで6000億円、売上を60億円と見込む。北米のゲームを日本向けに再利用するビジネスを手がけた経験や、すでに多数の相談が寄せられていることを挙げ、事業の可能性の大きさを強調した。

 

ブラッククローキャピタル代表の菅原康之さんは「ニーズはあると思うが、プラットフォームとしてマネタイズできるかがチャレンジになる。会社外での資産共有はハードルが高いが、会社内でのナレッジ共有にも使えるかもしれない」とコメントした。

 

スマホで買える太陽光発電サービス「CHANGE」

チェンジ・ザ・ワールド代表の池田友喜さんは、日本のエネルギー自給率はわずか9.5%で、9割を世界に頼っている現状を説明。消費者一人ひとりが太陽光パネルを持つことは難しくても、太陽光発電のオーナーに簡単になれるしくみがあればエネルギー自給率が上がるとして、スマホアプリ「チェンジ」を発表した。チェンジは、アプリ上で誰でも簡単に太陽光発電パネルのオーナーになることができ、電力会社への売電収益を得ることができるプラットフォーム。1ワット220円から買うことができ、保有しているパネルの売却も可能。「エネルギー環境に貢献しながら資産運用ができる」という社会的意義を強調し、「たくさんのひとりが世界を変える。そんなソリューションになる」と力を込めた。

経営共創基盤の山下翔さんは「なぜ池田さんなら実現可能なのかという、他社と比べた優位性を示すことができれば投資を得やすくなると思う」とコメントした。

5人の起業家によるピッチ後は、メインステージと特設ステージで同時並行で別々のプログラムが展開され、来場者が会場を行き来しながら熱心に耳を傾けていた。

 

スタートアップと知財戦略

メインステージでは、スタートアップが知財戦略をどう考えていけばいいのか?をテーマに議論が展開された。モデレーターを務めたのは、ドワンゴの知財部マネージャーをを経て現在IPtech特許業務法人副所長の湯浅竜さん。落合陽一さんが代表を務めるピクシーダストテクノロジーズの法務・知財を担当する木本大介さん、コロプラの知財財産部門を担当したIPTech特許技術本部長佐竹星爾さんが登壇した。

 

「スタートアップ初期での知財戦略をどうすればよいのか」という湯浅さんの問いかけに対し、佐竹さんは「まずは事業の話を前のめりで聞いてくれる弁理士を見つけることが必要。事業内容が理解できなければ、スタートアップの知財戦略を立てることは成り立たない」と指摘。木本さんは「エンジニアなど技術部門と弁理士だけが話し合うのではなく、創業者・CEOなどがどんなビジネスを展開して社会をよくしようとしているのか?という事業の全体像を語ってもらい、弁理士はその上で特許取る方法がいいのか、他の方法で権利を守るかの戦略を考えていくことが重要」と強調した。

 

フィンランド大会出場をかけ、氷水に浸かりながら起業家がピッチ

一方サブステージでは、氷水に浸かりながら起業家がピッチを行うクレイジーな企画が出現した。実は仙台市と産業連携関係にあるフィンランド共和国オウル市で毎年開かれている、氷の湖に浸かりながらのピッチイベント「Polar Bear Pitch」を再現したもの。フィンランドでの本大会の出場権をかけ、日本で初めて予選会が開かれたのだ。

ピッチをしたのは、ザミラ株式会社の高野真一さん、株式会社UPTORYの歌川貴之さん、Share Senceの藤波純さん、株式会社hyoiの渡邉輝さん、funky jump株式会社の青木雄太さん、株式会社prezyの高橋佑熙さんの6人。氷の入った水に脚をつけ、「もうだめ」という悲鳴も漏れる中、凍えながら自社のプロダクトやサービスを観衆に説明した。今回のイベントのコーディネートを務めたビジネスオウル日本担当コーディネーターの内田貴子さんは「よく頑張ってくれて期待以上だった。オウルでも活躍してくれるはず。サウナで温まって帰って」と起業家たちの奮闘をねぎらった。

スタートアップ × 人材

メインステージの2つ目のプログラムは「人材」をテーマに、サーキュレーションの横谷尚祈さん、epi&company代表の松橋穂波さん、事業開発プランナー・コピーライターの宮川洋さんが登壇。仙台市とサーキュレーション社が始めた「外部人材による新規事業創出プログラム」を紹介した。

このプログラムは、大企業のプロ人材を中小企業に送り込み、プロ人材が新規事業開発にあたるというもの。この枠組みを活用し、女性のキャリア支援などを展開する松橋さんの会社には、元博報堂の宮川洋さんが派遣されている。松橋さんは「専門性のない分野を一人でやると莫大な時間と労力がかかるし、経験ある人を起用したいと考えるとお金も高くなる。その中で周りの力を借りられることによって、物事が進んでいく」と、起業の初期段階で外部人材を活用することの意義を実感を込めて語った。

 

スタートアップ × 都市

サブステージでは「スタートアップ×都市」と題し、秋田県湯沢市で起きている地域変革の動きを紹介。現地で「発酵」をテーマにした地域開発に取り組む株式会社グランマの本村拓人さんとヤマモ味噌醤油醸造元7代目の高橋泰さん、仙台市産業振興課の白川裕也さんの3人が、地域でのイノベーションについて議論した。

本村さんと高橋さんは、湯沢市を「発酵都市」という切り口で世界に発信し、遊休不動産や自然資源、食の伝統などを活用した観光コンテンツ開発を企画している。本村さんは世界各国の都市を回った経験から共通している現象として、「とても狭い地域エリアでも民間レベルでイノベーションを起こすことができ、人を還流させることができる」と主張。高橋さんはそのためには個々人の創造性が重要になるとして、「すべての人が自分の好きな感情をエンジンとして高めつつ、社会や自分のやらなければいけないタスクと掛け合わせていけるか?が重要」と語った。白川さんは「街に、新しい挑戦や尖った人が生まれるような『雰囲気』が大事。行政も安全な位置から抜けてグレーゾーンを攻めて広げていくべき」と話した。

 

海外起業家スペシャルトーク

メインステージ最後は、フィンランド出身の若手起業家でラウンドゼロ社CEOのダニエル・ランタラさんが講演。26歳の若さで3つの企業を立ち上げ、会社の売却や10億ダウンロードのゲームアプリも開発した経験などから、起業家として必要なことを訴えた。

ダニエルさんは、投資家から興味をもたれるために「常にアクティブで、少しクレイジーであれ」。落胆するような出来事があっても常に「もう一歩先へ進む」こと。事業の成功のために必要にもかかわらず自分が知らないことはないか?を確認することなどを起業家に必要な要素として挙げた。

ダニエルさんは「事業で失敗し、自分には能力がないのだとやる気をなくしたこともあるが、失敗したことで『失敗の図書館』が自分の中にできた」と、常に失敗から学ぶ起業家精神の大切さを説いた。そして「自分はこういう人間だと言い続け、色んな人と楽しく交流してきた。自分をしっかり持っていると “あいつはやり遂げる” と信頼してくれるようになる。人とハートでコミュニケーションすることが大事」と語った。

 

スタートアップ × デザイン

サブステージ最後のプログラムは「スタートアップ × デザイン」。スタートアップ企業の商品・サービス開発で重要性を増すデザインをどう考えるかについて、アンカーデザイン代表の木浦幹雄さん、富士通デザインの志水新さん、ニューロマジック取締役の木村隆二さんの3人が対談した。

「デザイン」の意味について、志水さんは「目的を達成するための手段を選択したり、考えて実行したりする」一連のプロセスと作業であることを説明。木浦さんは北欧におけるデザインの捉え方を紹介し、「デザインには、どの辺りにイノベーションのチャンスがあるのかを探る『機会発見』、考えたアイディアをユーザーらに伝える『ストーリーテリング』、プロダクトをどう世の中に出せるのかという『実行』の3つの役割がある」と説明。この「デザイン思考」の過程がスタートアップ企業でも活用できることを示した。

 

モデレーターを務めた木村さんは「スタートアップにおけるデザインはファイナンスと同じくらい命のようなものになる。起業家の方には自身がサービスのUXデザイナーだ、という気概でいてほしい」と語った。

 

最も会場の共感を呼んだピッチ「オーディエンス賞」のゆくえは

メインステージでは、スタートアップピッチの表彰が行われた。会場の観客が共感した起業家に「Like」を投票し、票を最も獲得した起業家に贈られる「オーディエンス賞」は、ゼンシンの前田忠嗣さんが獲得。パートナー企業のさくらインターネットが選ぶ「さくらインターネット賞」は、クラウドセンスの冨田尚さんに贈られた。

フィンランドでの氷水ピッチに日本人として初出場するのは…

 そしてフィンランド・オウル市での「polar bear pitching」の日本人初出場権をかけた予選は、funky jumpの青木雄太さんが優勝。内田貴子さんは「フィンランドでいう、シス(ガッツ)が一番現れていた。オウルでお待ちしています」と青木さんにコメントを贈った。

前田さんは「賞を獲れると思っていなかったが、自分が発表したビジョンが実現できるようにベストを尽くしていく」。冨田さんは「貴重な経験ができた。これから色々支援いただくと思うが、よろしくお願いします」と会場に語りかけた。青木さんは「日本代表の重みがすごい。仙台から世界に冠たる大企業を作っていきたい」とコメントした。

終わりに仙台市経済局の遠藤和夫局長があいさつし、「来年もやります。来年も期待して下さい!」と呼びかけると、会場から大きな歓声と拍手が沸き起こった。司会を務めた伊藤さんは「仙台市、起業家、支援者らみんなでエコシステムをつくり、イベントが来年も再来年も次も盛り上がるように応援していけたら」と笑顔でコメント。竹井さんは「仙台はこんなことになっているの?と色んな人に驚かれた。この熱をもっと発信していきたいし、東北魂を見せつけていきたい。みなさんで力を合わせて盛り上げていきましょう」と、仙台が熱く盛り上がった3日間を締めくくった。