「“一次産業の価値を掘りおこす”東北の起業家が集結!
 TOHOKU IGNITION DAY2開催しました」

10月26日、東北の起業家を東京に集めたイベント「TOHOKU IGNITION DAY2」が開催されました。
今回2回目の開催となったこのイベントについて、レポートをお届けします!

TOHOKU IGNITIONとは?

TOHOKU IGNITIONとは、今の東北の「面白さ」や「多様性」を伝えるために、仙台市が2016年9月〜2017年1月に4回にわたって都内で開催するイベントです。
東北で面白い取り組みをしている起業家を東京に集め、毎回異なるテーマで開催しています。

第2回のテーマは“東北の食と一次産業”。
一次産業に新しい価値を吹き込む挑戦をしている方をゲストにお招きしました。

会場となったのは、「 食×農のコワーキングスペース 銀座ファーマーズラボ」。
今回の「食と一次産業」というテーマにぴったりな会場です。

気になるゲスト、モデレーターは?

今回のゲスト、モデレーターは、一体どんな方々だったのでしょうか?
ゲスト、モデレーター含め、4名のプロフィールをご紹介します。

ゲスト

・高橋博之さん(一般社団法人 日本食べる通信リーグ・代表理事、NPO法人 東北開墾 ・代表理事)

1974年、岩手県花巻市生まれ。岩手県議会議員から事業家へ転身。“世なおしは、食なおし。”のコンセプトのもと、2013年に特定非営利活動法人「東北開墾」を立ち上げる。史上初の食べ物つき情報誌『東北食べる通信』 編集長に就任。2014年、一般社団法人「日本食べるリーグ」を創設。 都市と地方・生産者と消費者をつなぐ事業を展開し、日本中を飛び回っている。

・長谷川琢也さん(一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン 事務局長、ヤフー株式会社復興支援室)

東日本大震災後に石巻に移り住み、石巻を拠点に被災地や東京をうろうろしながら東北の人たちとビジネスを立ち上げる。被災地の農作物や海産物、東北の歴史が息づく伝統工芸品などをネットで販売する「復興デパートメント」や、東北の水産品にブランド価値を与え、新たな水産業を創造する「三陸フィッシャーマンズプロジェクト」の立ち上げ等に従事。現在、これからの漁業の担い手となる漁師を増やしていくトリトンプロジェクトに奮闘中。

・毛利親房さん(株式会社仙台秋保醸造所 代表取締役)

以前は設計事務所に勤務。自身で設計した建物が震災でなくなってしまったことをきっかけに、震災復興に関わり始める。地元宮城のワインで宮城を応援しようとワイナリー設立を決意。様々な応援を受けながら、2015年に秋保ワイナリーをオープンさせる。地域や生産者を最優先に考え、ワインを通じて宮城を盛り上げようと挑戦し続けている。

モデレーター

・槇徳子さん(株式会社エムシーストラテジー 代表取締役)

中部日本放送株式会社を経て、テレビ東京に入社。夕方・昼のニュースなど、多くの番組を担当。株式会社エムシーストラテジーを設立後は、PR・広告戦略のコンサルタントとして経営者、セミナーや動画コンテンツの企画制作に携わる。一方で、新興国を中心に金融・経済状況を取材しながら起業家・投資家と親交を深める。その後、ベンチャー企業のマスコミ記者向けプレゼンイベントや、アジア圏女性の経済動向を発表する「アジア女性経済会議」を企画・主催するなどしている。

第1部 パネルディスカッション

19:00、いよいよ「TOHOKU IGNITION DAY2」がスタートしました。
第1部はゲストによるパネルディスカッション。テーマは、「東北の食と一次産業」です。
まず開会に先立ち、本イベント主催者の仙台市経済局地域産業支援課長の杉田より趣旨を説明しました。

(仙台市経済局地域産業支援課長の杉田からご挨拶)

続いてモデレーターである(株)エムシーストラテジー槇徳子さんにマイクをお渡しして、パネルディスカッションスタートです。

槇さん:「みなさんよろしくお願いします。では早速、なぜ東北の一次産業に関わるようになったのかも含めて、自己紹介をお願いいたします。」

(株式会社仙台秋保醸造所 毛利さん)

毛利さん:「私はもともとワインづくりとは無縁で、仙台市の設計事務所に勤めていました。しかし、震災で自分の設計した建物が被災し、さらには町全体がなくなっているのを目の当たりにしました。

自分も何か東北の力になりたいと思い、参加した復興会議で地元のワインをつくって地元の食を応援しようと提案しました。ワインには、人と人、人と地域、地域と地域をつなぐ力や農業や商業、観光等、多様な産業をつなぎ、育む力もあるからです。特に“食”では、宮城県にとどまらず、東北全体のいろいろな食をワインで応援していこうと考えています。震災後の東北を応援したいという気持ちで始めましたが、ようやく昨年12月にワイナリーを立ち上げることができました。

現在は、次世代の担い手育成や、ワインとのコラボ商品開発、ツアーやイベントの開催を企画したり実施したり、いろいろなプロジェクトを始動させています。」

(NPO法人 東北開墾 高橋さん)

高橋さん:「私は一言でいうと、生産者と消費者をつなげるために、『東北食べる通信』という食べ物付きの雑誌を創刊しています。私は震災後、沿岸部のカキ漁師と出会い、初めて食べ物の裏側と生産者の素晴らしさに魅せられました。

今の日本は、98%の消費者と、たった2%の生産者で成り立っています。私たちは、消費社会の中で、食材というゴールしか見ていません。しかし、ゴールまでの過程を知ることでもっと価値をあげられるはず。まずは多くの人に知ってもらいたい。そんな想いから、その人の生き様や世界観、知恵、工夫、苦労、技術をメインに伝え、食材を付録につけた『東北食べる通信』を創刊しました。

また、届けるだけでなく、実際に生産者と消費者につながってほしいと思い、SNSの活用や交流会やツアーの開催なども行っています。今では全国36地域にモデルが広がっています。先月には、“ポケットマルシェ”というさらにハードルを下げて多くの消費者が生産者から気軽に直接旬の食材を買えるEコマースのプラットフォームを作りました。こんな風に、気軽に生産者と消費者がつながっていってほしいと思い活動しています。」

(一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン 長谷川さん)

長谷川さん:「私が東北に関わった決定的なきっかけは、誕生日が3月11日だったことからです。もともと東京出身で、Yahooの社員として、最初は泥かきやがれき撤去をしていましたが、もっと力になりたいと会社にお願いして石巻に支社を作り、5人で移住しました。被災生産者を応援するネット販売や、人々が交流できるコワーキングスペースの提供、地元の食材を使ったお弁当づくりなど数多くのプロジェクトを実行してきました。

それらの活動をしていく中で若い漁師と出会い、今の漁業を取り巻く現状について話を聞き、感銘を受けました。現在、魚の消費量が肉より少ないことや、日本の漁獲量が世界一ではなくなってしまったこと、漁師は自分の子供に「役場の職員になれ」と言っていること。日本は島国で、昔から海の恵みを漁師にとってもらって生かされてきたのに、このままでは漁業がなくなってしまう。代々受け継がれてきた漁業を守りたい!という想いでフィッシャーマンジャパンを立ち上げました。

今まで漁師の仕事は3K(キツい、汚い、危険)と言われてきましたが、これを新3K(かっこいい、稼げる、革新的)に変えていこうと活動しています。漁師のカッコよさを伝える動画づくりや漁師と消費者をつなぐ飲食店のオープン、漁師同士がつながれるシェアハウスのオープン、漁業求人サイトの運営などをしています。このように復興支援ではなく“ビジネス”で盛り上げていきたいと思っています。

パネルディスカッションテーマ①「関わりの中で発見した東北の印象」

槇さん:「長谷川さんは東京出身ですが、東北に関わる中でイメージが変わったり、何か新しい発見はありましたか?」

長谷川さん:「東北の人たちがいないと、自分は今まで生きてこれなかったんだなと気付きました。食べ物も電気も東京では作れない分、地方が作っている。そのことを知り、感動した反面、今まで無関心だったことが申し訳ないし恥ずかしいという気持ちになりました。そこが自分自身一番変わったところですね。

東北の人たちに関しては、みんなすごいことをやっているのに、“自分が”って言わないんです。そういう“THE日本人”みたいな人がたくさんいて奥ゆかしいなと思います。」

パネルディスカッションテーマ②「知ってほしいエピソード」

槇さん:「活動していく中でうれしかったことや苦労したこと、会場の皆さんにもぜひ伝えたいというエピソードはありますか?」

長谷川さん:「たくさん反響があったことですかね。地元の水産高校の子が漁師に興味があるのでお話を聞かせてくださいと訪ねてきたり、水産高校の先生が全生徒にお話をしてほしいと問い合わせがあったり、全国の漁師さんから、まさにそういうことを前からやりたかったんだよと連絡があったりしました。

それだけでも十分うれしかったのですが、その中でも一番感動したのは、普段話すことが苦手な現役の漁師さんが、正直漁師を続けるか悩んでいたけど、自分たちの想いは伝わるんだ!と熱いことをFacebookに投稿していたこと。やっぱり素晴らしさや魅力を伝えていかないと伝わらないし、担い手も育たないと感じました。子供たちの将来の選択肢の一つになったら嬉しいなと思います。」

高橋さん:「私がぜひ紹介したいのは、福島県会津地方の伝統野菜“小菊カボチャ”のエピソードです。

小菊カボチャは、400年前に会津若松に伝わった伝統あるカボチャですが、手間もコストもかかるため、現在生産者はたったの2人しか残っていません。その生産者を訪ねたとき、私はこんなことを言われたのです。「これをやめたら会津が会津でなくなる。次の世代に引き継がないと死ねない。」と。私はこのことに心を揺さぶられ、『東北食べる通信』の特集を組むことにしました。

その後、この物語、小菊カボチャのおいしさを知った読者と、生産者の交流会を催しました。その中で“在来種を増やすには種が必要”だということが分かり、ある読者が他の読者に呼びかけて生産者に種を返すことになったのです。協力してくれたのは、その数なんと、約80人。

カボチャの種を乾燥させてメッセージ付きで返したところ、生産者は大喜びしてくれました。翌年、生産者は地元の農業高校の生徒と返ってきた種をまき、読者たちと一緒に収穫し、交流会を開催。これを3年繰り返しました。

このことが読者の口コミで広まり、生産が追い付かないくらい販路が拡大しました。それに加えて、以前小菊カボチャを育てていて、このにぎやかな畑を見た農家さんが「じゃあうちも」と小菊カボチャづくりを再開したのです。今では小菊カボチャの生産者は2人から15人に増え、作付面積もなんと40倍にまで拡大。さらに、この種を返そうという運動は地元でも広がり、農家を志望する高校生も出てきたというのです。

私はこの経験から、物語を知って価値に共感する人は必ず参加してくれること、作物は地元のアイデンティティになること、それを残していくには“非効率”も大切にすべきことなど、たくさんのことを教えてもらいました。」

パネルディスカッションテーマ③「行政のバックアップは?」

槇さん:「仙台市では、皆さんのように新しいことに挑戦していく方々を積極的にサポートしているように思うのですが、実際のところ行政のバックアップは感じますか?」

毛利さん:「前職の設計事務所時代は行政から仕事をいただいくことが多かったのですが、行政には厳しいイメージを持っていました。しかし、起業するタイミングで、仙台市の起業支援センターアシ⭐︎スタや農政課の方が資金や退社のアドバイスなどに親身に相談や応援をしてくださいました。今では、一緒に地域を良くしていこう!という同じ思いを持った仲間のような方がたくさんいます。

高橋さん:「最近は、ハイブリット公務員、ハイブリット民間人が増えているなと思います。民間人みたいな動きをする公務員だったり、まさに長谷川さんのように行政マンみたいな動きをする民間人。そういう境界線がわからない人が、明らかに増えていると思う。今後縮小していく社会の中では互いに協力していくことが大切になるので、とても素敵だなと思います。」

パネルディスカッションテーマ④「PR」

槇さん:「せっかく大勢の方に来ていただいていますので、ご自身の関わっている生産者さんや食材などのPRをお願いいたします。」

毛利さん:「東北は、日本で一番四季がはっきりしていて、おいしい旬の食材も、世界三大漁場もあります。現在、東北ではワイナリーが増えているので、ワインツーリズムで東北の地元の食材と地元のワインを合わせて提供できるように、飲食店と連携をしていくつもりです。いろんな生産者の方とコラボして、生産者の声をぜひ伝えたいと考えています。食べる人から、“あの時あれおいしかったな、また食べに行きたいな”と感動して記憶に残ってもらえたら嬉しいです。そうやって、ワインを通して東北を盛り上げていきたいです。」

高橋さん:「岩手県は地熱発電と馬の文化が盛んです。その地熱と馬を使って作っているマッシュルームが岩手県八幡平市にあります。その素晴らしさは、生産者本人が一番伝えられると思うので、フナハシくーん!」

ここで、まさかの高橋さんのお知り合いの生産者の方が登場。
なんと、偶然にも東京のこのイベント会場に足を運んでくださっていました。

船橋さん:「岩手八幡平でマッシュルームを作っている、ジオファーム八幡平の船橋です。私は、競走馬の仕事をしていて、震災後お世話になった馬の生産者さんを手伝うために大阪から岩手に移住しました。馬の可能性をもっと生かせないかと考え、馬のたい肥でできるマッシュルームを作るようになりました。とても新鮮でみずみずしい、自慢のマッシュルームです!」

長谷川さん:「生産者呼ぶなんてずるいなぁ(笑)
私は、今が旬のカキですね。東京の人は、カキと言えば12月の“カキ鍋”が旬だというイメージがあると思いますが、漁師からすると一番おいしいのは3月なんです。漁師は、味も形も一番いい旬の時期に売りたいのに、実際の消費の流れとしては12月に最高値で売れます。このようなギャップを皆さんに知っていただいて、埋めていけたらいいなと思います。

そして、この3人が関われそうなものは、“ホヤ”ですね!
宮城県石巻市近辺が全国生産の約8割を誇っていて、名実ともにナンバーワンなのです。ホヤって、西に行くほどイメージ悪いと思いますが、本当はワインと合って、超うまいんです。ホヤは人間の舌の5つの味覚を同時に刺激する唯一の食べ物だと言われています。ホヤを食べた後、舌がとっても過敏になっているので、そのあと飲食するといつも以上に甘く感じたり、コクが増したりするんです。まだ認知度が低いので、ホヤの新メニュー開発とかプロモーションできるんじゃないですかね?」

高橋さん:「いいね、ホヤやろうよ!ワインは海中熟成にして、“東北食べる通信”でも紹介して!」

毛利さん:「私、実はホヤ苦手なんです…」

(会場笑)

長谷川さん:「…今度最高にうまいホヤ紹介しますね。」

毛利さんの発言で会場は笑いに包まれました。

そして、第1部の最後は、参加者の方からの質問タイム。
今回は、3名から質問をいただきました。

会場からの質問

槇さん:「ぜひ、質問がある方がいらっしゃいましたらどうぞ!」

参加者:「毛利さんに質問です。なぜ、ワインに注目して起業をしようと思ったのですか?」

毛利さん:「震災前に、金沢の“ぶどうの木”という観光農園に行ったことがきっかけです。ぶどう狩りに行ったつもりだったんですけど、そこにはレストラン、チャペル、結婚相談所などがあり、特にレストランなんて予約しないと入れないくらいの大盛況ぶりでした。その光景を見て、農業でここまでやれるのか!とカルチャーショックを受けたんです。それがずっと記憶に残っていて、震災後、東北でもできないかと思い、挑戦しました。」

ゲスト3名の熱いトークで第1部が終了。
会場は大きな拍手に包まれました。

第2部 懇親会

「かんぱーい!」

という音頭により、第2部の懇親会がスタートしました。
ここからは、ゲストも参加者もスタッフも入り混じっての交流です。

今回の懇親会のメインは、宮城県と山形県の“芋煮”!
宮城県と山形県には、秋の風物詩として“芋煮”をする文化があります。

宮城県の芋煮は、味噌ベースに豚肉。

山形県の芋煮は、醤油ベースに牛肉。

東京で宮城と山形の2種類の味を食べ比べることができました。

そしてもちろんお酒も東北のもの。
宮城と山形を中心に日本酒などが提供されました。

参加者にとっては、ゲストの起業家とも1対1でお話できる貴重な機会。
代わる代わる会話を楽しんでいる様子が見られました。

懇親会の最後は、ゲストの高橋さんの一本締めで終了しました。

終わりに

いかがでしたか?
終始会場から笑いが起こるほど和やかな雰囲気のイベントとなり、帰りを惜しむ姿も多く見られました。
東京に東北の起業家や東北にゆかりの人が集結するこのイベント。
ぜひ、次回の参加もお待ちしております!