TOHOKU IGNITION 2017 DAY3

Date :
2017.11.16
Place :
TECH PLAY SHIBUYA:東京都渋谷区宇田川町20-17 NMF渋谷公園通りビル 8F
Event Summary :
東北発!「水産業 x IT」でイノベーション
2017年度 3回目のテーマは 東北発! 「IT×水産業」のイノベーション
グローバルには成長産業である水産業。そして、世界でも有数の漁場を持つ東北。
そんな東北から、もしくは東北をきっかけに、今様々な水産業のイノベーションが生まれています。
今回は東北発、ITを水産業界の中で様々な形で取り入れて、
生産性向上・業務効率UP・これまでにない価値の創造を目指している方々を
ゲストにおむかえしてパネルディスカッションを行います。

11月16日(木)、東北の起業家の熱を伝えることで、東北の魅力を発信するイベント「TOHOKU IGNITION DAY3」が開催されました!

昨年以上の盛り上がりを見せるTOHOKU IGNITION

その内容についてレポートをお届けします!

TOHOKU IGNITIONとは

TOHOKU IGNITIONは、東北の「面白さ」や「多様性」を伝えるために、仙台市が2017年9月〜2017年12月に4回にわたって都内で開催するイベントです。課題先進地である東北で様々な取り組みを行う起業家をお招きして、毎回異なるテーマで開催しています。

第3回のテーマは”水産×IT”。


海の恵みが豊富で、世界三大漁場にも数えられる東北。その東北を舞台に「ITで水産業をもっと効率的に面白くしよう」と取り組む3名の方をゲストにお呼びして、アツく語って頂きました。

第一部 パネルディスカッション

開会に先立ち、仙台市経済局産業政策部地域産業支援課 起業支援担当主事の今野よりイベント趣旨についてご説明しました。

今回のモデレーターは、一般社団法人Code for Japanの関治之さん。

ITで地域課題を解決してきた関さんの自己紹介からスタートです。

関さん「一般社団法人Code for Japanの関です。私自身は東京生まれ東京育ちなのですが、震災を機に東京への一極集中に疑問を感じてCode for Japanを立ち上げました。市民と行政がIT技術を用いて、一緒に課題解決をしていく手助けをしております。今日は皆さんがどのようにITを使って水産業を変えているのか、とても楽しみです。では、それぞれ自己紹介をお願いします。

ゲスト自己紹介

三嶋さん:「株式会社アンデックス代表取締役の三嶋です。普段は仙台でITの開発を行っている会社です。ICTを組み込んだユビキタスブイを作っています。海上に置くブイにセンサーをつけ、温度や酸素、栄養などをネット上に保存します。これにより、漁師さんが家から海の様子を見ることができるようになりました。そしてこれからはデータを蓄積して毎年の海の様子を、数字で確認することもできるようになると思います。

私が水産に関わったのは松島のカキ養殖の漁師さんの話を聞いたのがきっかけでした。震災の津波で海の中の養殖環境が変わってしまったことで、漁師さんすら「どうすれば魚が捕れるかわからない」状態になっていました。そこを何とかしたいと思ったのが最初のきっかけですね。

私たちのプロジェクトには、ドコモさんやはこだて未来大学の教授も関わっています。被災地から新しいビジネスモデルを作って広めたい。水産業にICTを取り込んで、仙台という地域から新しいビジネスを全国、世界に広めていければと思っています。」

山内さん:「株式会社ヤマウチ専務取締役 山内恭輔です。地元南三陸で70年ほど続く鮮魚店を営んでいます。父から引き継いだ鮮魚店の他にもEコマースや水産加工品の卸を行っています。特に、Eコマースは自社のサイトのみを使って、お刺身などの生魚やカキやホヤなどの水産加工品を販売しています。

また、2013年からITツールを使った業務改善に取り組んでいます。水産業の働き方改革ですね。自社の業務をやりやすく、そして短くすることに取り組み、残業0にすることに成功しました。水産業は鮮魚店も水産の加工も、とにかく手間がかかる大変な仕事で、なかなか残業ゼロはできないと感じています。しかし、私たちはクラウドですべて管理しているので、指示出しなどを大きく減らして効率化ができています。」

山本さん:「株式会社フーディソン代表取締役の山本徹です。「世界の食をもっと楽しく」を実現するために水産流通のプラットフォームを構築する事業を行っています。具体的な取り組みとしては、魚屋としての小売りの事業や、卸売り、地場産品のPR事業、魚の加工人材や漁師さんなどの人材紹介などを行っています。

私は埼玉の内陸部出身で、不動産の営業や介護や医療分野での起業するなど、これまでは水産と無縁の仕事をしていました。水産業に関わるきっかけは、岩手でサンマの漁師さんに出会ったことです。サンマを1キロ10円で売っているという話を聞いて、素人ながら「この業界で何が起こっているんだろう」と感じたことが最初のきっかけです。

そこから卸売りや仲買の人と会う中で、水産の流通の現場は80年ぐらい変わっておらず、ITが全然入っていないらしい。起業のテーマを探している最中で、自分でもやれるチャンスがあるかもしれないと思えたのも大きかったです。」

パネルディスカッション

テーマ1:どうして、水産なんですか?

三嶋さん:「今はIT屋をやっているんですが、私が新卒で入った会社は食品業界でした。24歳から31歳までいた会社は水産商社。そこでエビ担当で東南アジアをまわって、エビの養殖現場なども現地の人と一緒に回っていました。日本向けの商品開発や、東北の水産会社との取引等、食品の流通に関しては知識があったのが大きな理由ですね。」

山内さん:「私はシンプルですね。そこに山があったからと同じです(笑)実家が鮮魚店をやっていましたから。20代は東京でカメラマンをやっていましたが、長男という事もあって、いずれ戻らなくてはというのは感じていました。親父が東京に来て、東京駅から帰っていくその背中を見て、年取ったな…と思ったことが帰るきっかけになりました。ネットショップの写真がきれいなのは過去のキャリアですね(笑)最近は、カメラマンとしての仕事も復活させて、仙台で写真を撮ったり映像を作ったりする会社も作りました。」

山本さん:「先ほども言いましたが、岩手の漁師さんとの出会いがきっかけです。新卒で会社に入ったころから、いつかは自分で起業したいという思いがあってテーマ探しを22歳からしていました。初めて入った会社で出会った先輩たちと起業させていただいたんですが、本当の意味では自分では決断していなかったんです。

起業するテーマを探すうちに気付いたら33歳になっていて、そこで人生は無限ではなくて、残りの時間がどんどんなくなっていくことに気付いたんですね。『なんで生きているんだろう』という問いに、誰かからの答えを待っていたんですが、自分で決めるしかないと気付いて。そんな決意を固めた矢先、先ほどの漁師さんとの出会いがありました。」

パネルディスカッション

テーマ2:東北だからこその強烈なコンテンツを生み出すには?

山内さん:「コンテンツを生む方法はないです(笑)というか、すでにあるんですね。東北って実はいいモノづくりをしているんですよ。ただ、表現することや外に向けて発信することが上手くない。そこが一番の課題だと思っています。震災を機に東京など外からアクションを起こしてくれるようになって、東北の良さに改めて気づいた人は多いと思います。もともと持っているものを表現しきれればそれでいいのかなと思います」

山本さん:「見方を変えていく、今あるものの価値をもう一度見直していくという事が必要と私も思います。まずお腹をいっぱいにすることが価値だった時代もあるかもしれない。でも、幸いなことに今は豊かな時代になって、食卓をどんなストーリーで作るか、というところまで昇華されてきています。

生産する地元では当たり前すぎて、発信されてないものも多いと思うんです。例えば、地域ごとにとれる魚にあうお醤油や魚の漬け方がある。これらも一つのストーリーだと思うし、今日のテーマであるITで生産地と消費地の距離感をどんどん縮めて、発信していければと思います。」

パネルディスカッション

テーマ3:思い描くビジョンに対して、課題はありますか?

三嶋さん「ハートをアツく持って共感者を増やすことですね。人間はやっぱり一人の限界があるので、仲間をどれだけ作っていくのかが重要かと思います。今回の例でいうとドコモさんだったり、はこだて未来大学さんだったり。共感者や協力者を増やすことで加速していく。どれだけ仲間を作って、応援してもらうことで仲間と自分の力との掛け算をしていけるかが課題解決のポイントだと思います。」

山内さん「はたらきやすさを作ることかなと思います。特に水産業の就業環境はITで劇的に変わる。お二人も言っていた通り、いままで水産の現場は流通も含めてITが全く入ってこなかった産業です。だからこそ、これから導入したら変わる。まずは、従業員50人ほどの自社で実現できました。現場の方との調整など、難しいところもありますが、色んなITを使ってもっと水産業全体の就業環境を良くしていかないといけないと感じています。」

山本さん「水産のIT化が進まない原因は、商品でいる時間がとても短いことにあります。魚はすぐに傷んでしまう。だから大量に水揚げした魚を全部データ化するのが非効率に思われていました。揚がる先からすぐに価格と売り先を決めて捌いた方が早く、IT化の必然性がなかった。どうやって魚をデータ化して管理していくか。そうすれば今世の中に既にある物流の仕組みに自然に乗ると思っています。」

会場からの質問

関さん:「非常にITの可能性を感じるディスカッションでした。皆さんから何かパネラーの方へ質問はありますでしょうか?」

Q1:地方では若者がいないとよく言われますが、マンパワーに対しての課題感はありますか?また、ITで解決している例があれば教えてください。

山内さん「人がいないことに関しては、南三陸は特にそうですよね。町全体の人口が1万4000人しかいないので、そもそも人が少ない。ITでの改善で特に成果が出ているのは、

繁忙期の12月ですね。年末に向けて本当に忙しく、昔は0時ぐらいまで受注作業をしていました。ITを導入して、残業はかなり解消されたと思います。」

山本さん「築地の中でも働いている人はかなり高齢になってきてますし、採用もかなり難しいです。もちろん僕の会社でも難しい。ITを使ってやっていることだと、魚の計量業務などは他が2人3人と人数をかけているところをQRコードなどを使って一人でできるようにしました。こういった、効率化の部分でITを活用していく道があると思っています。」

三嶋さん「漁師さんも高齢化でどんどん人が辞めています。ITを使って、漁業の現場を変えることで漁師さんが儲かるようにしたいですね。我々が作った仕組みで漁師さんが儲かってちょっといい車に乗る。そうして、東北の漁師ってかっこいいよねと思われるようになっていくといい。今一緒にやっている養殖漁師さんは比較的若くて、一緒に漁師がかっこいいと思われる環境を作ろうと言っています。」

Q2:10年後のビジョンをどう描いていているのか教えてください。

山本さん:「起業当時の話なんですが、2023年までに水産流通のプラットフォームを再構築すると掲げています。いままで日本が投資して作り上げてきたハードウェアとして市場や漁港などがあります。今あるハードを使わせていただきながら、ソフトの面は私たちが作り上げて変えたい。地域や市場の中だけでなく、日本全国や世界での売り買いやマッチングを実現させていきたいです。私たちの食卓においしい魚が上る、漁師さんは適切に儲かる仕事になっている、そんな状態を目指したいですね。」

山内さん:「今日お二方とお会いして、水産業も新しく生まれ変われそうだなと思えています。私の場合は、すごく地域と密着した商売になっているので、10年後の港町をこうなっていてほしいと常にイメージしながら仕事をしています。小さいことではありますが、自分の港町がなくならないように町のみんなで力を合わせて頑張っていきたい。地場に残り続ける企業であり続けたいと思っています。」

三嶋さん:「経営理念として掲げているのは、『IT会社として社会とお客様にサービスを提供して喜んでもらう。そうして社員とその家族の幸福をめざす。』です。身近な仲間である一緒に働いている社員も幸せにできる会社にしていきたい。まず、この経営理念を会社としてしっかりと地道にやっていくという事が大事だと思っています。その上で地元の企業として、東北の水産業の新しい仕組みを作っていく。そういった社会や地元への還元も増やしていければと思っています。」

第二部:懇親会

第二部は懇親会。山内さんおすすめの魚介類と東北の美酒を集めました!

ゲストの山内さんが生産されている、カキのスモーク、ボイルホヤ、お刺身タコ。

日本酒はTOHOKU IGNITION DAY4で登壇される太田さんの酒蔵、「大七酒造」のお酒をご用意しました。

東北のおいしい海産物と日本酒で、参加した皆さんの会話も弾んでいました!

帰りを惜しまれる方が多く、最後まで会場に残って交流される方も多くいらっしゃいました。

終わりに

いかがでしたでしょうか?東北から起こる水産業のIT変革を参加者の皆さん、そして僕自身も感じ取ることができました。

「TOHOKU IGNITION」最終回のDay4もお待ちしております!